思わぬ、皆様の関心が高かった接ぎ木の講習。
手元の資料を何度か読み直していたら、説明を受けていたのに記載していない点があったので、補足を・・・。
【接ぎ木の時期と根拠】接ぎ木の時期は3月以降。
穂木は、剪定を行う場合、1~2月に採取したら、乾燥しない様に濡れた新聞紙に包んで、休眠状態のままビニール袋に入れて冷蔵保存します。
Q.なぜ、今の時期に接ぎ木しないで3月にするのか?それは、台木が水の吸い上げを行っている時期でないと、せっかく形成層同士をくっ付けても穂木に水分や養分が移行しないから。
3月は確実に芽が動き出し、根からの水分吸収が増えてくる、つまり水の吸い上げが活発になって、接ぎ木の成功率が上がる、と言う理屈だそうです。
【保存する袋がビニールでないといけない根拠】上記の穂木の保存は何でビニールじゃなくちゃいけないの?と思われる方、必見。
Q.どこが違うのか?それは、ポリエチレン系の袋とビニール系素材の性質の違いにあるのです。
ポリエチレン系の袋はNG・・・《 ガス交換性があり、空気の出入りがある為、乾いてきます 》
ビニール袋はOK・・・・・・・《 ガス交換性がない、つまり密封性があり、乾燥しない 》ちなみに、私が層積処理をした後に、ジッパ付きの袋に種を入れていたものは、ポリエチレン系だった様で、昨日確認したら、乾燥気味になっていましたので、再び水分を足して、ビニール袋に入れてから、再度ジッパー付きの袋に入れ直しておきました(笑)
【穂木の取る部位】Q.穂木は、何でも良いのか?NOである。ちゃんと
『葉芽』や花芽+葉芽が付いた
『混合花芽』が付いていなければなりません。
枝を伸ばす為の芽、つまり将来枝になるべき穂が必要なんです。
当たり前のことだけど、品種によっては、葉芽か花芽か、混合か区別のつきにくいものがあるので、
意外と笑えないんですよね~。
接いだのは良いけれど、将来枝になるべき芽が付いていないと、接ぎ木の意味が・・・(笑)
ということで、
穂木にする場合は、芽なら何でも良い・・・はNG
穂木にする芽は、将来の枝になるべき芽が必ず含まれること・・・OK【穂木のカット面に近い芽を外側に向け、カット面は逆側にしなければならない根拠】Q.なぜ逆にしなければならないのか?それは、将来の枝が展開した際に、内向きの枝にならない様にする為です。外側にすることで、より多くの光を浴びることができます。

どうしても、理由があって内向きにしたい方以外は、外向きの【正】の方が将来、光をたくさん浴びて、より良い枝になること請け合いです(笑)
もうひとつのポイントは、
【上の葉芽の上の部分は、枯れこんでしまうので、芽のすぐ上から反対側の下へ向けてカットし、癒合剤を塗ると良い】のだそうです。
・・・これら全て、吉野さんの受け売りですけど(笑)
【台木の皮を剥く部位】Q.台木はどんな部分でもカットして良いのか?台木をカットして、皮を剥く際に不適格に部位は、接ぎにくい部位となる。
どんな部位か。
・カットしようとしている部位自体に節がある
・カーブのR面側
こんなところは避けたいですね。
できるだけフラットな面の方が、カットした穂木と面がぴったり合うので、台もまっすぐの部分にカットを入れたいものです。
とまあ、こんな感じでポイントがあったのですが、手技だけで1記事になっちゃってましたので、今回追記させていただきました。
また、ふいに思い出したら、都度追記します。
・・・と言っても大ベテランの方には、常識的なポイントであろうと思いますが、私の様な素人には、ひとつひとつが、全部 『なるほど~』と頷けるものばかりでした。
吉野さん、曰く。
『接ぎ木は理屈ではなく、技術である。ちゃんと接げれば結果が出ます』はい、その通りだと思います。ただ、ど素人の私には10年早い様な・・・、いや20年かな??? (^ ^;)
それから、前回の記事で、KOHさんより昔は木ロウを用いて接ぎ木の接合をしていた、と言う情報もいただきました。貴重な情報をありがとうございました。
前回記載させていただきました
『つぎ口より風が入らぬ様に泥にてぬるべし』の一説。KOHさんの初耳です、というコメントに吉野さんがお応え下さいました。
ご自分の資料の『つぎ木より風の入らざるよう泥にてぬるべし』と書かれた書は天保14年(1844年)江戸時代後期の農学者 大蔵永常 おおくらながつね著 『広益国産考』の第4巻に記載されているものだそうで、今日図書館へ原本確認に行って下さったそうです。
お電話では、もともとの原本は筆書きで達筆過ぎて読みにくかったそうですが、それの解説本には、間違いなく接ぎ木にはテープの代わりに『泥』が使用されていました、とお伝え下さいとのことでした。
講義のみならず、アフターフォローも万全の吉野先生、心よりお礼申し上げます。
御世話になり、ありがとうございました。